第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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【はじめに】聴神経腫瘍患者のQOLは,早期診断によるところが大きいのは周知の事実であるが,いまだに診断の遅れる例が少なくない.聴神経腫瘍の診断が遅れる理由としては,様々考えられるが,耳鼻咽喉科医が慎重に対応すれば,多くは小腫瘍のうちに発見できると考えている.聴神経腫瘍の初発症状としては蝸牛症状,前庭症状,味覚異常と多岐にわたり,特有な症状は存在しない.当科では,近年,聴神経腫瘍診断におけるVEMP検査の有用性について報告してきた.今回は,内耳道内かつ10 mm以下の聴神経腫瘍についてVEMP検査の有用性について検討した.
【対象】2010年4月から2015年10月までに当科を受診し,内耳道内かつ10 mm以下の聴神経腫瘍を認めた23症例について検討した.男性:9名,女性:14名で平均年齢は54.8歳であった.
【方法】上記患者について,聴性脳幹反応,純音聴力検査,語音明瞭度,温度刺激検査,VEMP検査,何らかの眼振の有無について検討した.
【結果】異常出現率は聴性脳幹反応:63.6%,純音聴力検査3分法:69.6%(10 dB以上を有意とした),語音明瞭度:22.2%(50%以下のものを有意とした),温度刺激検査:57.9%,VEMP検査:oVEMP;56.5%,cVEMP;52.2%,o,cVEMPの一方,または双方の変化:82.6%,眼振:55.6%の結果を得た.
【考察】上記検査では,聴性脳幹反応,純音聴力検査,VEMP検査の異常出現率が高かった.聴神経腫瘍では,聴性脳幹反応の異常発現率が高いのは諸家の報告通りである.純音聴力検査の閾値上昇は聴神経腫瘍の大きさに相関しないことはいわれている.次に,聴神経腫瘍におけるVEMP検査の有用性を調べるために当科における正常集団のVEMP閾値に基づいて,正常側VEMP検査結果を判定した.その結果,内耳道内聴神経腫瘍に対するVEMP検査は正常側VEMP検査に比較して統計学的に有意に変化していることを確認した.当科の以前からの報告を交えながら文献的考察を踏まえ報告する.

2016/06/23 18:00〜18:36 P8群

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