第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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リンパ管腫はリンパ管の先天性形成異常であり,新生児の頸部に好発する.腫瘍径の増大時には,気道狭窄により致死的になる可能性もある.浸潤性増殖傾向があるため,頭頸部領域に発生した場合,完全切除が困難である場合が多く,OK-432局所注入療法等が行われている.頸部リンパ管腫に聴力異常を合併した報告は,我々の渉猟しえた限りまだない.今回我々は,頸部リンパ管腫による耳管機能不全が原因と考えられた滲出性中耳炎の1例を経験したので,若干の文献的考察を踏まえて報告する.
症例は6ヵ月の男児.胎生25週2日に行われた胎児エコーで50 mm×30 mmの頸部腫瘤と腹壁浮腫を認め,頸部リンパ管腫が疑われていた.在胎38週4日に予定帝王切開で出生.Apgar scoreは5点/8点であった.CT,MRI,病理検査にて頸部リンパ管腫と診断された.日齢10日目よりOK-432局所注入療法を施行されたが縮小傾向は認めなかった.月齢3ヵ月目に小児外科で頸部気管切開と腫瘍部分切除を施行されるも,喉頭軟骨上端付近までの切除にとどまった.家庭環境による保育困難があり,月齢7ヵ月で児童福祉施設に転院となった.当科には月齢6ヵ月で聴覚精査目的に紹介初診となった.新生児聴覚スクリーニングでは両側refer,耳鼻咽喉科受診前のABR再検にて右pass,左referであった.頸部リンパ管腫は頸部両側に多房性囊胞性であり,咽頭後間隙,副咽頭間隙に進展しており,一部は頬筋近くまで進展していた.日齢6日のMRI T2WIで鼓室内に液体貯留を疑わせる濃度を認めた.ASSRでは,右の聴力はほぼ正常であった.両側外耳道は頸部リンパ管腫の進展により狭小化しており,鼓膜は一部観察ができないが,ティンパノグラムで両側B型であり,複数回のMRI T2WIで鼓室内高信号である事から,両側滲出性中耳炎があるものと考えており,今後もフォローの予定である.

2016/06/23 18:00〜18:36 P8群

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