第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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全身麻酔に伴う合併症の一つである悪性高熱症(malignant hyperthermia)は,その発生率が極めて稀である.今回,全身麻酔下に行った鼓室形成術の術中に悪性高熱症を発症した症例を経験したので報告する.
症例:7歳,男児.学校検診にて左の難聴を指摘され,近医耳鼻咽喉科受診.CTにて先天性真珠腫が疑われ当科紹介受診.家族歴,既往歴,アレルギー歴なし.術前検査でも特に問題なく全身麻酔下にて鼓室形成術を予定した.麻酔導入はfentanyl 25 μg,rocuronium 15 mg,thiamylal 100 mg,sevoflurane 5%で行った.維持はfentanyl,remifentanil,rocuronium,sevoflurane 2%で行った.麻酔開始30分後から徐々に体温上昇を認め,80分後には体温上昇,EtCO2高値のため麻酔科研修医が上級医をcall,すぐに手術室緊急callを行い麻酔器交換,ダントロレン投与を行った.ダントロレン投与後速やかに解熱し,EtCO2も正常化した.ミオグロビン尿やその他の合併症はみられなかった.CK値は最高で536であった.ICU管理にてその後徐々にCK値は正常化し,術後7日で退院となった.
考察:悪性高熱症は非常に稀な疾患で,一生のうちに経験しない麻酔科医もいるほどである.耳鼻咽喉科医が経験することはさらに稀であると思われる.今回の症例は悪性高熱を疑う家族歴もなく,術前から予測するのは非常に困難な症例であった.麻酔科医および手術室スタッフの速やかな対応により後遺症も残さず救命可能であった.悪性高熱症の治療は治療開始までの時間をいかに短くするかが大切であり,外科医としてもその対応について熟知しておく必要がある.

2016/06/23 17:30〜18:00 P7群

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