第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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ANCA関連血管炎(AAV)の一つである多発血管炎性肉芽腫(GPA)は上気道病変で初発することが多いとされるが,耳症状を初発症状とし耳鼻咽喉科を初診することも少なくない.近年AAVに伴う難治性中耳炎としてANCA関連血管炎性中耳炎(OMAAV)が提唱され周知されてきているが,特に症状が限局している場合は診断に難渋することも少なくなく,急激に感音難聴が進行しろうとなったり,全身型に移行し致死的となることがある.そのためできるだけ早期の診断と治療の開始が重要である.今回我々は耳症状を初発症状としたAAVについて検討したので報告する.
対象:2003年から2015年11月にAAVまたはAAV疑い例と診断され,初発症状に耳症状を伴い,当科で純音聴力検査を施行した12例16耳を対象とした.
方法:臨床所見および治療経過について検討した.また同時期に慢性中耳炎の診断で手術加療を施行した症例を対照群として炎症所見について比較検討した.
結果:12例16耳中PR-3ANCA陽性5例7耳,MPO-ANCA陽性5例7耳,両陰性2例2耳であった.当初診断は滲出性中耳炎9耳,慢性中耳炎4耳,急性中耳炎または内耳炎3耳であった.耳鼻咽喉科受診から診断までの平均期間は約24.8ヵ月で,治療開始後聴力が改善した症例は5例5耳,悪化・不変が8例11耳でそのうち2例2耳ではscale outとなった.診断契機は他の脳神経症状が出現し肥厚性硬膜炎で診断に至った症例が4例と最多で,次いで関節炎・発熱が3例,副鼻腔炎や咳など典型的症状が2例,画像検査・病理検査結果で疑われた症例が2例,強膜炎が1例であった.対照群に比べAAV群では有意に白血球数,好中球数,CRP値が高く,アルブミン値が低かった.

2016/06/23 17:30〜18:00 P7群

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