第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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【はじめに】耳性頭蓋内合併症の主たる原因として,真珠腫性中耳炎,慢性中耳炎,急性中耳炎等があげられる.近年,抗菌薬の発達により耳性頭蓋内合併症は減少し,特に急性中耳炎から続発する成人の細菌性髄膜炎症例を経験することは稀となっている.急性中耳炎は耳鼻咽喉科の日常診療で,最も多く遭遇する疾患の一つであるが,一方で耳性細菌性髄膜炎は,発症すると重篤な状態に陥る危険があり,早期診断ならびに適切な対処が必要である.今回我々は,急性中耳炎から続発した成人の細菌性髄膜炎症例を経験したので報告する.
【症例】39歳,女性.主訴は右耳痛.数日前から感冒様症状があり,右耳痛と難聴が出現.近医で急性中耳炎の診断で右鼓膜切開術を施行.CDTR-PIの投与で改善がなく,翌日から頭痛や嘔吐が出現.3日後には40度の発熱ならびに後頸部痛が出現し,当科紹介となった.初診時所見では,鼓膜切開孔は閉鎖し右鼓膜の膨隆を認めた.同日右鼓膜切開術を施行し,漿液性内容の漏出を認めた.血液検査所見ではWBC 19,600/μl,CRP 28.0 mg/dlと炎症反応の高値を認めた.全身所見として項部硬直を認めた.同日施行した髄液検査で細胞数4,520/μl,多核91%と著明な増加,ならびに糖定量16 mg/dlと低値を認め,急性中耳炎から続発した細菌性髄膜炎の診断となった.細菌性髄膜炎に対して抗菌薬の投与,ならびに内耳炎と考えられる感音難聴に対してプレドニゾロンの投与を行い,全身状態ならびに聴力は改善し退院となった.感染経路として頭蓋底欠損を疑い,再入院のうえ試験的鼓室開放を行った.術中所見では明らかな髄液漏は認めなかったが,上鼓室天蓋に骨欠損部を認めた.同部位を骨パテで補強し,III-c再建とした.現在術後6年であるが,再発を認めていない.
【考察】合併症のない若年者の細菌性髄膜炎症例を経験することは,耳鼻咽喉科医としては多くない.本症例について考察する.

2016/06/23 17:30〜18:00 P7群

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