第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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近年,抗菌薬の発達,普及にともない,急性中耳炎により重篤な合併症が引き起こされる頻度は低くなってきた.今回われわれは,急性中耳炎が原因でS状静脈洞血栓症,Bezold膿瘍をきたした症例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
症例1:13歳,女児.現病歴:X年1月初旬より感冒症状があり,1月中旬より右側頭部痛を自覚したため,近医受診後,当科を紹介された.右鼓膜所見:白濁・膨隆を認めた.単純CT:中耳炎所見を認め,S状静脈洞周囲には含気を認めた.治療経過:鼓膜切開を施行した.同日入院とし,抗生剤(ドリペネム)投与を行った.入院4日目に,造影CTを施行したところ,S状静脈洞血栓症を認めたため,乳突削開術を施行した.以後,抗凝固療法も併せて行い治癒に至った.本疾患の治療は,起炎菌に対する強力な抗生剤の投与とS状静脈洞周囲の炎症巣の除去である.抗凝固療法を行うかどうかは議論の余地があるところである.本症例では,抗凝固療法を行い副作用や合併症なくS状静脈洞の再開通を認めた.
症例2:9歳,女児.現病歴:Y-5日より39度以上の発熱,Y-4日より右耳後部痛,頸部腫脹が出現し徐々に増悪し,発熱が持続するためY日に小児科受診した.右耳漏,右頸部腫脹があり,WBC23110,CRP22.03と高度炎症を認めたため,当科を紹介された.外耳道下壁の肉芽様隆起と耳漏を認め,右耳介は聳立し斜頸を認めた.CTでは乳様突起の一部は菲薄化していた.乳様突起先端から副咽頭間隙に進展する膿瘍を認め,Bezold膿瘍と診断し,同日深頸部膿瘍切開術を施行した.耳漏の菌検査からはParvimonas micraが同定された.Parvimonas micraは口腔,消化管の細菌叢を構成するグラム陽性嫌気性球菌で,慢性歯周病や扁桃周囲膿瘍,慢性副鼻腔炎,慢性中耳炎,肺化膿症の病原菌として,特に深部感染症への関与が知られている.抗生剤の感受性はいずれも良好であり,メロペネムの投与により治癒に至った.

2016/06/23 17:30〜18:00 P7群

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