第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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耳管に発生する悪性腫瘍は比較的稀な疾患である.今回我々は耳管内に発生した粘表皮癌の1例を経験したので報告する.
症例は64歳女性で,主訴は右難聴,右滲出性中耳炎,右耳管開口部腫瘤精査依頼である.X年1月頃からの右難聴を認めていたため同年6月に近医耳鼻咽喉科を初診した.右滲出性中耳炎の診断で投薬加療となったが,1週間後再診した際に症状改善を認めず,右耳管開口部に腫瘤を認めたため,同年6月下旬に精査加療目的に当科紹介となった.既往歴,家族歴に特記すべきことは認めなかった.
初診時現象では右中耳貯留液を認め,右耳管開口部に腫瘤性病変を認めた.また,標準純音聴力検査では右伝音難聴を認めた.左鼓膜,耳管開口部に異常所見は認めなかった.
以上から,腫瘍性病変に対して確定診断目的に同年7月に生検を行った.炎症性肉芽腫との診断であったが,悪性腫瘍の可能性も考慮し再度切除を行った.腫瘍は耳管開口部に茎をもち,耳管内に続く腫瘍であり,可能な範囲での切除を行った.再生検の結果も肉芽腫との診断であったため,鼓膜チューブを留置し,ステロイド内服,ステロイド点鼻など行ったが著変なく,外来での経過観察となった.
腫瘍増大なく経過していたが,X+1年7月頃より軽度増大を認め,同年11月にはさらに増大を認めたため再度生検を行った.粘表皮癌の診断となり,他全身に異常所見なく耳管内原発の粘表皮癌T1N0M0と診断した.様々な治療法を検討した結果,患者の希望もあり重粒子線治療目的に他院へ紹介した.X+2年2月から加療を行い,現在のところ腫瘍増大を認めていない.

2016/06/23 18:06〜18:42 P6群

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