第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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奇形腫は胚細胞由来で精巣や卵巣などの生殖器や仙尾部に好発する良性腫瘍であり,頭頸部領域での発症は2~10%と少ない.そのなかでも鼻腔や中咽頭における発生が80%程度占めるとの報告もあり,耳管から発生する奇形腫は非常に稀である.また発見年齢に関しては,胎内や生下時に発見されるケースが多く,70%以上が1歳未満に発見され,成人になってから発見された例は全体の7%にも満たないとの報告がある.今回われわれは右耳管から発生し成人後に発見された奇形腫を経験したので報告する.
症例は45歳男性.25歳頃から右滲出性中耳炎を繰り返し,換気チューブを留置されていたが原因は不明であった.また5年前より右鼻閉が出現し徐々に増悪した.前医で右後鼻孔を完全に閉鎖するような腫瘤性病変を認め,生検では診断困難であったため当科紹介となった.画像所見では副咽頭間隙から上咽頭にかけて造影効果の不明瞭な腫瘤を認め,内部は石灰化や脂肪織を含み不均一であった.当科でも副咽頭間隙腫瘍や奇形腫を疑い数回生検を施行したが確定診断に至らず,診断と鼻閉改善目的に内視鏡下腫瘍切除術を施行した.腫瘍は右耳管内腔に茎をもち耳管咽頭口から突出するような病変で,耳管粘膜との連続性を認めた.全摘出は困難であったため耳管咽頭口で腫瘍を切除した.腫瘍は線維性で弾性硬の組織の中に軟骨様の硬い組織が混在しており,病理診断は成熟奇形腫であった.術後滲出性中耳炎は改善を認めないが,残存病変の再増大は認めていない.
奇形腫は胚細胞由来であり多くの場合小児期までに発見されるが,本症例のように耳管から発生する奇形腫では,その大きさによって耳症状出現までに時間がかかり,診断に至るまでにはさらに時間を要する例もあると考えられる.

2016/06/23 18:06〜18:42 P6群

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