難治性耳管開放症に対する効果的で簡便な治療法として,耳管咽頭口より汎用の綿・紙軸綿棒を用いて,耳管内深部にルゴール液を塗布注入し耳管閉塞を図る方法を考案した.
【方法】綿・紙軸の大綿棒(直経5 mm),小綿棒(直径2.3 mm)を用いる.患側鼻腔をスプレー麻酔後,内視鏡下に耳管咽頭口に大綿棒(4%リドカイン+5000倍アドレナリン浸透)を挿入し5分間麻酔,続いてルゴール液浸透大綿棒を約10 mm挿入し10分間浸潤,次にルゴール液浸透小綿棒を耳管内に15~20 mmブジー挿入し10分間浸潤する.綿棒はすべて耳管通気管の湾曲に合わせて曲げて挿入する.小綿棒挿入は耳管峡部までとする.施行後2週間は耳管通気,強い鼻かみは禁忌とする.
【対象症例】耳管開放症診断基準(2012小林)を満たし,内視鏡で鼓膜の明らかな呼吸性動揺を認め,保存的治療を1ヵ月以上続けてもほとんど効果がなく,耳管咽頭口に麻酔の大綿棒挿入により症状が消失し,本法の施行を承諾希望した12例(17耳),男4例,女8例,左耳6例,右耳1例,両耳5例で年齢は24~80歳(平均60歳)であった.病悩期間は5ヵ月~5年6ヵ月(平均2年6ヵ月)であった.
【結果とまとめ】初回治療で3~16日の症状消失効果があり,その後も自声強聴が軽快し,その緩解期に回を重ねると効果は重積され,症状消失期間の延長,出現回数の減少が認められた.平均治療期間6ヵ月,平均8回の本法処置により6耳は治癒(2ヵ月以上の症状消失),7耳は著効(1ヵ月),3耳は軽快(2週間),1耳は有効(1週間)となった.有害事象として5例で時に小綿棒挿入時疼痛を訴え,5耳で術後数日間水泡音が聞こえ,4耳で滲出性中耳炎を合併し1耳は鼓膜切開した.本法は手順に従い注意深く施行すれば難治性耳管開放症の治療として簡便,効果的で比較的安全な治療法となり得る.
2016/06/23 18:06〜18:42 P6群