第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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(はじめに)ガングリオンは関節部の腱鞘や滑膜組織などから発生する囊胞性疾患である.手根関節背側に好発し,顎関節部に発症することは稀である.顎関節部では耳前部に発生することが多く,外耳道腫瘤として発症することは非常に稀と思われる.今回我々は外耳道腫瘤として発症した多房性顎関節ガングリオンを1例経験したため報告する.
(症例)66歳男性.主訴:右耳出血.
既往歴:心房細動,心原性脳梗塞.
現病歴:右耳掃除中に出血したため近医受診し,右外耳道内に腫瘤性病変を指摘された.右外耳道腫瘍として近医総合病院に紹介された.局所麻酔下にて生検が施行され,ガングリオンと診断されたため,手術加療目的で当科紹介となった.
初診時所見:右外耳道後壁を主とする腫脹を認め,鼓膜は観察できなかった.CTにて外耳道前壁に一部骨欠損が認められた.
手術所見:耳内法にてアプローチを行った.腫瘍手前で皮膚切開,腫瘍は皮膚と剥離困難で,一部皮膚とともに切除した.外耳道後上部に骨欠損があり,囊胞状腫瘤を確認した.骨欠損は外耳道上方から前方顎関節方向へと続いていた.腫瘤を切開すると透明ゼリー状内容物が流出した.さらに前方に二つ孤立した囊胞が認められ,全て摘出した.摘出後,骨欠損部は耳介軟骨を充填,さらに軟骨板で外耳道形成し,有茎骨膜筋弁で皮膚欠損部を再建した.摘出した病理検体からは孤立した囊胞性病変が3つ認められ,組織学的にもガングリオンで矛盾しないものであった.術後1年経過しているが,経過は良好で,再発も認められていない.
(考察)顎関節に発症するガングリオンは比較的稀である.外耳道内に腫瘤を形成するものはさらに稀であり,渉猟し得ただけで数例の報告のみであった.多房性,再発性であることが多いとされるが,外耳道内に多発する孤立性囊胞として摘出し得た症例は非常に稀と思われた.再発に関しては今後も慎重な経過観察が必要と思われた.

2016/06/23 17:30〜18:06 P5群

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