第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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【はじめに】外耳道原発の良性腫瘍の治療は基本的に外科的切除となることが多い.今回,骨部外耳道に発生した血管腫と思しき腫瘍に対しレーザー蒸散による治療症例を経験したので報告する.
【症例】67歳,女性.
【経過】X年11月反復するめまいで近医より紹介(BPPV).その際の診察で右外耳道に暗赤色の腫瘍性病変を認めた.MRIを行ったところ同部位に造影剤で増強される境界明瞭な病変が認められ,血管腫疑いとの診断であった.CTでは病変は骨部外耳道に限局し,骨破壊はなく鼓膜とも連続していないことが確認された.難聴や出血等の症状もなく増大傾向もないため約4年半外来で定期的にフォローされていた.通院が長くなり根治を希望したため,X+5年6月外来でレーザー治療を行った.
【治療】骨部外耳道皮下に0.5%キシロカインE液を局注し,腫瘍の鼓膜側に生食を含浸した綿花を留置してレーザーが貫通した際のエネルギー吸収素材とした.はじめに腫瘍を一部生検したのちにCO2レーザー10W(continuous)を反復して照射し腫瘍を蒸散.蒸散直後は出血を認めなかったが,術後数時間経過して出血を認めたため軟膏ガーゼパッキングと止血剤投与による処置を行った.
【術後】病理検査結果では悪性成分は認めなかった.しかし血管成分を認めるものの血管腫と確定できるほどの検体量ではなかった.蒸散した腫瘍の基部は1ヵ月後の診察時には通常の皮膚に覆われており,蒸散が不十分であった鼓膜側の基部に腫瘍の残存を認めたが,鼓膜全体を顕微鏡下でも見渡せるようになった.術後6ヵ月経過観察を行っているが増大傾向は認めていない.
【まとめ】本症例ではレーザーによる腫瘍のみの蒸散のため骨露出がほとんどなく,周辺の正常皮膚組織の合併切除も不要であった.局所麻酔下に外来で行える外耳道良性腫瘍の治療の一つとしてレーザー蒸散は有用であると考えられた.

2016/06/23 17:30〜18:06 P5群

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