第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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【はじめに】言語習得後難聴にはしばしば,家族性,進行性が認められることがある.今回我々は進行性感音難聴を認め遺伝学的検査でTMPRSS3遺伝子変異を同定した症例を経験したので報告する.
【症例】23歳,女性.周産期に特記なし.8歳の時学校健診で初めて難聴を指摘され,9歳時に当科を紹介され初診となる.言語発達遅滞なし.乳幼児健診での指摘なし.両側1 kHzを中心とした谷型の感音難聴を認めた.初診2年後,左低音部の悪化をきたす.23歳時に聴力の再度の悪化とめまいにて再診し,両側低音部を中心に悪化を認めた.側頭骨CT,脳MRIは異常を認めなかった.遺伝学的検査でTMPRSS3遺伝子変異をホモで同定,両親は保因者であった.
【考察】TMPRSS3遺伝子変異による難聴は日本人の常染色体劣性遺伝形式をとる難聴者のなかでは0.7%の頻度でみられ,保因者の多いGJB2遺伝子やSLC26A4遺伝子と比較すると比較的稀な変異とされている1).言語習得後難聴としての報告が散見され,高音障害型感音難聴を呈することが多いが臨床症状にはばらつきがある1).40歳以前に発見される若年発症型進行性感音難聴は従来からその存在が知られていたが,難聴の遺伝学的検査の進歩により,一部は遺伝子変異によることが明らかとなった.自覚症状のない学童期に未発見の場合本症例もそのような難聴として対応される可能性があり,遺伝学的検査は成人期に発見された原因不明の感音難聴の確定診断に有用と考えられた.
【文献】1) Miyagawa M, Nishio S, Sakurai Y, et al. : The Patients associated with TMPRSS3 mutations are good candidates for electric acoustic stimulation. Ann Otol Rhinol Laryngol 124 Suppl 1: 193S–204S, 2015.

2016/06/23 18:06〜18:48 P4群

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