第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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はじめに:メニエール病では台風や雨天などの低気圧時においてしばしば症状が悪化することが知られる.そのために,低気圧環境に暴露される旅客機搭乗がメニエール病を増悪させる可能性があり,旅客機による移動を拒否する患者がいる.旅客機搭乗が,メニエール病の増悪因子となるか否かを検討した.
対象と方法:対象は,メニエール病患者37名(男女比=13:24,年齢分布29~79歳)である.これらについて,気象上の低気圧時(台風や雨天)および旅客機搭乗時に,蝸牛症状(耳鳴,難聴,耳閉感)やめまいが増悪したことがあるかどうかを調査した.
結果:気象上の低気圧時において,蝸牛症状が増悪したものは22例(59%),めまいが増悪したものは19例(51%)であった.メニエール病発症後に旅客機に搭乗する機会があったものは25例あった.これらのうち,旅客機搭乗時に蝸牛症状が悪化したものは10例(40%),めまいが悪化したものは1例(4%)のみであった.
考察:本邦の記録上もっとも気圧の低い台風は,1961年の第2室戸台風で925 hPaであるが,近年の旅客機内圧は0.8気圧すなわち800 hPa程度に与圧されている.すなわち旅客機内は,気象上の低気圧よりはるかに気圧が低い.しかし,メニエール病患者で低気圧時にめまいが増悪するものは多いが,旅客機搭乗中にめまいが増悪するものは少ない.よって単なる気圧の低下がメニエール病の症状の増悪させるのではないと考えられる.また適切な治療を受けている限り旅客機への搭乗を一律に禁止する必要はないと考えた.

2016/06/23 17:30〜18:06 P3群

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