第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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メニエール病はめまい,耳鳴,難聴発作を反復する疾患であり,その病態は内リンパ水腫である.難治性の疾患であり発症機序には不明点も多いが,経験的にストレス増加が悪化要因である事が知られており,また近年アクアポリン受容体を介したバソプレッシンによる内リンパ水腫増悪等,発症機序の一部が解明されつつある.メニエール病診療ガイドライン(前庭機能異常に関する調査研究班,2011)では加療を生活指導と薬物治療からなる保存的療法から開始し,無効の場合中耳加圧治療,内リンパ囊解放術,選択的前庭機能破壊術と段階を踏む事を推奨している.また高橋らによると,生活指導単独でめまい発作はほぼ全例制御可能であり,難聴も3割で有意に改善するという.このように生活指導はメニエール病加療の基礎である事から当院めまい外来でも重視し積極的に行っている.我々は「患者本人が生活習慣の問題点を自覚し自ら生活を改善させるためには,まず指導の要点が記憶し易い物でなくてはならない」と考え,指導における工夫として「ねる,みず,うんどう」というシンプルな標語を提示し,睡眠確保,水分摂取,有酸素運動について確認・励行する指導を継続している.同時にストレスコントロール目的で睡眠確保,血中バソプレッシン濃度増加防止・利尿目的で水分摂取,内耳循環改善目的で有酸素運動を励行する事によってストレスや内服薬の薬効との関連性も説明・教育し,症状改善時の減薬や悪化時の頓服使用に対する理解を深めるよう促している.
当院では2011年から2015年の5年間に131名(男性49名,女性82名)の新規メニエール病患者に対してこの標語に基づいた生活指導を中心に加療した.今回は,これら症例での上記生活指導の効果判定として,めまい発作頻度,聴力推移,指導浸透度,指導不徹底要因について分析するとともに,著効例や指導不徹底を生じやすい背景下で悪化に至った典型例等,若干の症例を交えて報告する.

2016/06/23 17:30〜18:06 P3群

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