第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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めまい患者の重力感受性を評価する場合,これまではSubjective Visual Vertical(SVV)が唯一の指標であった.SVVは頭部直立時における実際の重力方向と自覚的な重力方向との誤差を計測する検査である.我々はSVVに加えて,頭部直立時と頭部左右傾斜時のSVVから求めた頭部傾斜感覚ゲイン(Head Tilt Perception Gain, HTPG)を新しい重力感受性の指標として提案している.今回,メニエール病における重力感受性障害を検討する目的で,奈良県立医科大学耳鼻咽喉科で一側性のメニエール病と診断された32名(右メニエール16名,左メニエール16名,男13名,女19名,年齢22~78歳,発症からの期間1~300ヵ月)を対象に,座位におけるSVV(患側を正)および左右のHTPGを測定した.32名の平均±標準偏差は,SVV(基準値:2.5度以内)では0.0±3.6度,HTPG(基準値:0.85~1.20)では患側1.07±0.23,健側1.01±0.24であった.SVVには偏倚は認められず,HTPGには患側と健側で有意差(P=0.199, paired t-test)は認められなかった.しかし,発症からの期間を96ヵ月以内の患者(24名)に限ると,SVVでは0.6±3.4度と大きな偏倚は認められなかったが,HTPGは患側1.10±0.25,健側0.99±0.26と患側の方が有意(P<0.05)に大きかった.すなわち,メニエール病ではSVVには偏倚は認められないが,HTPGには患側が健側よりも大きくなり,発症からの期間が長くなると差は小さくなる傾向が認められた.この結果はメニエール病の重力感受性障害を評価する場合,SVVよりもHTPGが指標となることを示している.今後さらに検討を進めそのメカニズムを考察する.

2016/06/23 18:12〜18:48 P2群

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