第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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緒言:ムンプス難聴はムンプスウィルスの感染によって生じる,多くは一側性の急性感音難聴である.ムンプス難聴は血行性にウイルスが内耳に感染することにより生じるとされる.患者の多くは難聴のみを訴えるが,時にめまいを伴うことがあるので留意する必要がある.今回我々は,めまいを伴ったムンプス難聴の2例を経験したので報告する.
症例:47歳男性(症例1).両側耳下部の腫脹と38.9度の発熱があり,内科でムンプスと診断された.その数日後から左難聴を自覚し,さらにその1週間後からふらつきが出現したため近医耳鼻咽喉科を受診し,同医より当科を紹介され受診した.受診時の聴力検査では,右30.0 dB,左105 dBの左高度感音難聴を認めた.また注視眼振検査では右向き2度の水平性眼振を認め,頭位・頭位変換眼振でも右向き定方向性眼振を認めた.また温度刺激検査では左CP94.5%と左高度半規管機能低下を認めた.さらに初診時の採血でムンプスIgM抗体価の上昇を認めたことから,前庭障害を伴った左ムンプス難聴と診断した.その後,同じような経過を呈した右ムンプス難聴症例(症例2)を経験した.
考察とまとめ:ムンプス難聴の発症率はムンプス患者の0.005%程度と比較的稀であり,前庭障害を合併する症例はさらに少ない.このため,ムンプス難聴における前庭障害は不明な点が多い.今回我々は,めまいを伴ったムンプス難聴患者に対し,温度刺激検査,vHIT,VEMPを組み合わせた網羅的前庭機能評価を行い,障害部位の同定を行った.今後はさらに症例の蓄積を行い,ムンプス難聴の前庭機能障害に疾患特異性がないか検討を行う予定である.

2016/06/23 18:12〜18:48 P2群

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