第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

プログラム

No

タイトル

内耳奇形においては,内耳道底との隔壁が欠損しており,脳脊髄液腔と内耳腔が交通し髄液漏が起きることがある.耳性髄液漏は髄膜炎の原因となりうる.今回我々は,反復性髄膜炎を契機にcommon cavity型内耳奇形が発見された症例において,髄液漏を疑って手術を施行したところ,術中に髄液漏を認めず,中耳から内耳への炎症波及が髄膜炎の原因となったと考えられた症例を経験したので,術前のプランニングと手術所見を中心に若干の文献的考察を加え報告する.
症例は4歳11ヵ月男児.3歳7ヵ月時に肺炎球菌による細菌性髄膜炎をきたした.抗生物質投与で一旦治癒したが,その9ヵ月後,再度髄膜炎をきたした.CTにより右内耳奇形を,ABR検査で右難聴を指摘され当科に紹介受診となった.内耳奇形はcommon cavity型であり,内耳道底との隔壁は欠損していた.中耳にはMRIでT2高信号の陰影を認め,術前診断としては耳性髄液漏が反復性髄膜炎の原因となっていたと考えた. 術前のプランニングとしては,外耳道後壁保存型乳突削開術から後鼓室開放を行い,卵円窓を確認して,内耳に筋膜や軟骨片の充填を行って髄液漏を停止することを考えた.状況によっては鼓室全体を脂肪で充填することも念頭に置いていた.術中所見において,アブミ骨周囲をよく観察したところ,アブミ骨は拍動しており内耳腔は脳脊髄液で満たされていると考えられたが,髄液漏出は認めなかった.反復性髄膜炎の原因は,中耳から内耳への炎症波及であったと考えられた.中耳炎がコントロールされ内耳への炎症波及が起きなければ髄膜炎の反復は起きない,また,アブミ骨を摘出するとgusherが起き手術侵襲が大きくなると考え,中耳粘膜の不良肉芽の清掃とアブミ骨周囲を側頭筋膜被覆するにとどめて手術を終了した.
現在術後半年が経過し髄膜炎を反復することなく経過良好である.

2016/06/23 17:30〜18:12 P1群

操作