第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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錐体部真珠腫に対し真珠腫の完全摘出が重要である.大きな創腔が形成されるため髄液漏,感染防止,硬膜の保護の観点から創腔充填は望ましいが真珠腫が遺残していれば創腔内に真珠腫上皮を閉じ込めてしまうため創腔充填をためらう症例も認められる.今回我々は錐体部真珠腫摘出の際に髄液漏を生じ真珠腫上皮の完全摘出が困難であったため,デュラシールを用いた髄液漏閉鎖が有用だった1例を経験したので報告する.
45歳男性,左顔面運動障害,左耳痛にて近医受診.左側頭骨腫瘍疑いにて当科紹介となる.CT,MRIにおいて錐体部真珠腫と診断.左聴力聾のため経迷路法によるopen法を術式とした.術中所見では真珠腫は内耳道周囲も真珠腫上皮が進展しており,内耳道周囲上皮摘出の際に,髄液漏を認め,筋膜,組織接着剤にて閉鎖した.スパイナルドレナージを留置し手術終了とした.術後2病日より耳内より髄液の漏出を認められ,ドレナージ圧を調節したが停止せず術後8病日に全身麻酔下に髄液漏停止術を施行した.挿入した筋膜は髄液圧に押し出され,髄液の漏出を認めた.再度筋膜を挿入し内耳道から乳突削開部位までデュラシールを充填した.術後11病日に一旦デュラシールを除去したところ髄液の漏出は認められず再度デュラシールを充填した.その後も髄液の漏出は認められず,デュラシールが吸収された後は大きな開放創となり耳処置可能な状態となった.デュラシールはポリエチレングリコールエステル化合物であり脳外科領域において髄液漏防止の補填材として使用されている.塗布後4週から8週で自然吸収される特徴をもつ.今回髄液漏に対して脂肪充填,髄液漏停止後,2期的な手術も考慮したが上皮の完全摘出が困難であったため,デュラシールによる補強,髄液圧からの緩和による髄液漏停止,自然吸収といった特徴にて停止後は耳処置可能な開放創とすることが可能であり有用であると考えられた.

2016/06/23 17:30〜18:12 P1群

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