第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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頸椎前方プレート固定術による合併症の1つとして咽頭食道穿孔が知られているがその発生頻度は低く,遭遇機会は極めて少ない.咽頭食道穿孔は,高度の嚥下障害をきたすのみならず穿孔部から危険隙,副咽頭間隙へ感染が波及する危険性のある重篤な合併症である.プレートによる穿孔の大多数は手術操作によるものが占めており早期に発症することがほとんどであり,術後長期経過の後に穿孔をきたした症例は世界的にみても報告数は少ない.今回我々は,頸椎固定術後長期経過しプレートによる咽頭食道穿孔をきたした症例を経験した.
症例は69歳男性,著明な嚥下障害と咽頭痛を主訴に当科を受診した.6年前に頸椎脱臼骨折に対するC6-7のプレート固定術の既往があった.初診時の喉頭ファイバーで下咽頭後壁から食道入口部の腫脹と輪状後部の潰瘍を認め,下咽頭後壁と輪状後部から喉頭ファイバー下生検を行うも悪性細胞は認められなかった.上部消化管内視鏡を行ったところ,頸部食道にプレートの露出を認めた.腫瘍性病変の否定と咽頭頸部食道の詳細な評価のため,全身麻酔下に弯曲喉頭鏡下に観察を行った.咽頭,頸部食道の腫脹は肉芽様で組織学的にも腫瘍性病変は否定できた.プレートが咽頭と頸部食道に露出しており,プレートによる咽頭食道穿孔と診断し,プレート抜去と穿孔縫縮術を予定した.整形外科でプレートを抜去し,当科で憩室と穿孔の縫縮を行った.術後17日目の嚥下造影検査で嚥下と咽頭痛の改善を認め,経口摂取を再開した.
我々が検索し得た報告症例はいずれも手術加療されており,プレートとスクリューの抜去を試みるのはいずれの報告でも共通であるが,穿孔の閉鎖に関しては,単純縫縮のみであったり,筋皮弁や遊離空腸皮弁を用いるなど手術手技の選択は様々である.また,誤嚥と通過障害に対する補助的な手術として咽頭筋切開を追加するなど,患者の状態に応じた適切な術式の選択が求められる.

2016/06/24 10:40〜11:40 第3会場

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