第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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嚥下障害に対する治療は保存的治療と外科的治療に大別され,まず保存的治療として嚥下指導・嚥下訓練等を行い,奏功しない場合に外科的治療を考慮する.今回われわれは嚥下改善手術が著効した1例を経験したので若干の考察を加えて報告する.
症例:61歳,男性.
主訴:嚥下障害(延髄球麻痺).
既往歴:左椎骨動脈未破裂動脈瘤術後.
脳梗塞家族歴:特記すべき事項なし.
嗜好歴:飲酒歴;2合/day(20~59歳).
喫煙歴:20本/day(20~50歳).
現病歴および経過:平成X年左椎骨に未破裂動脈瘤を認め,他院でcoiling術を施行し,3年後に再coiling術を施行するも再増大を認め,前医紹介.平成X+9年bypass・coiling術施行.術後呼吸状態が悪化し気管切開術施行した.嚥下障害も出現したためPEG造設.全身状態は安定してきたものの嚥下障害が残存し,リハビリを行ったが改善を認めなかった.嚥下造影では食道入口部の通過障害があり,バルーン拡張術も施行したが改善を認めなかったため当科紹介となった.平成X+10年当科入院.嚥下改善手術の適応ありと判断し,嚥下改善手術施行.術後の経過は良好であり,嚥下訓練にて食事形態を調整しつつ経口摂取量を増やしていった.嚥下造影検査を施行し誤嚥なく経口摂取できることを確認.その後気管孔閉鎖試験をしたうえで気管カニューレ抜去し,気管孔を閉鎖.経過良好にて前医転院となった.
嚥下障害に対する外科的治療には様々な術式があり,個々の状態に即して術式を選択することとなる.本症例は食道入口部の通過障害があるため輪状咽頭筋切除と喉頭挙上術を施行した.術後の経過は良好であり,食事形態の工夫と嚥下訓練により大きな問題なく経口摂取のみで食事摂取可能となっている.現在は前医を退院し自宅での生活を送っており,外来で経過をみていく方針である.

2016/06/24 10:40〜11:40 第3会場

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