第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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頭頸部がんに対する原発巣の切除方法は,経皮的・経口的などアプローチ方法の変遷はあるが,手技に関してほぼ成熟している.しかし嚥下障害が遷延することはしばしば経験される.今回我々は,舌局所進行がんに対して嚥下改善手術を併用し,皮弁壊死など術後経過は良好でなかったが,嚥下機能が維持された症例を経験した.
症例は40歳代男性.数ヵ月前からの構音障害で近医受診,舌癌疑いにて当科紹介となった.初診時所見では可動部舌は腫瘍に置換,舌根部への浸潤も認めた.舌の可動性は不良,経口摂取も高度に障害されていた.舌癌(T4aN2bMO)の診断となった.手術拒否されたため化学療法を施行.経過中に喉頭温存手術であれば,手術を希望するとのことで,初診から3ヵ月後に手術施行(可動部舌全摘,舌根亜全摘,左頸部郭清,腹直筋皮弁による口腔再建,気管切開,輪状咽頭筋切除).術後皮弁壊死を来し,再手術を提示したが拒否されたため,皮弁のネクロトミーを適宜施行した.顎下部に一時的に外瘻形成したが,自然閉鎖.術後3ヵ月経過し創部は安定したが,皮弁は除去され右の舌根部がわずかに残るのみの状態となった.重度の嚥下障害が予想されたが,水分・半固形態とも誤嚥なく摂取可能であった.経口摂取は順調にすすみ,形態の工夫は要するが,全量経口摂取可能となった.また,家人との会話も不便なく行えている(会話機能評価基準:moderate(7点),嚥下機能評価基準:M3T4F4).気管切開および胃瘻も離脱しており,現在,無担癌で外来経過観察中である.
年齢が若いことと,嚥下改善手術(輪状咽頭筋切除)が嚥下機能の維持に有利に働いたと思われた.頭頸部癌治療後の嚥下障害につき考察を加えて報告する.

2016/06/24 10:40〜11:40 第3会場

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