第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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呼吸,嚥下,喀痰排出といった咽喉頭機能が十分に発達していない幼少期に気管切開を行った場合,成人に比べて気管孔依存の程度が高く,直接の原因となった病態が改善しても気管孔閉鎖に至らない症例が多い.当院における気管切開例のうち,気管孔閉鎖に至った症例と,現時点で維持が必要である症例について,基礎疾患や成長発達の面から比較検討を行った.
対象:2歳未満で気管切開を行い,気管孔形成から半年以上のフォローを行っている38例.
結果:38例中12例(31.6%)が気管孔閉鎖,またはそれに準ずる状態であり,26例(68.4%)で気管孔維持の必要があった.気管孔閉鎖例では4例が基礎疾患を有さず,8例がCHARGE連合などの基礎疾患を有していた.気管孔維持例では5例が基礎疾患を有さず,21例が基礎疾患を有していた.気管切開年齢の平均値は,閉鎖例で0歳7ヵ月,維持例で0歳8ヵ月であり差がなかった.成長発達の面では,閉鎖例12例中5例(41.7%)が年齢相当の運動発達であり,他7例でも遅延はあるが独歩可能,または今後可能と思われる程度であった.一方維持例では26例中11例(42.3%)が重症心身障害児であり,運動発達遅延のない症例は7例(26.9%)にとどまった.在胎日数,出生時体重において両群に差はなかった.また,気管切開後に経口摂取が進んだ症例では,気管孔閉鎖に至る例が多かった.
考察:小児において気管孔を閉鎖できる割合は多くても3割程度と報告されるが,気管孔閉鎖が児のQOL向上,成長発達に大きく寄与することは想像に難くない.今回の検討では,基礎疾患のない児はもちろん,基礎疾患を有する症例においても,嚥下機能や運動発達がある程度進めば十分に気管孔閉鎖の可能性があると考えられた.

2016/06/24 9:50〜10:40 第3会場

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