第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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下咽頭梨状窩瘻とは,繰り返す頸部膿瘍・急性化膿性甲状腺炎の原因となる先天性の内瘻であり,ときに診断と治療に難渋する.根治的治療は瘻管の結紮・摘出であり,1~3ヵ月の消炎後に行われるのが一般的であるが,癒着による瘻管の誤認や不十分な結紮により,術後も膿瘍再発を繰り返すことがある.今回,消炎のための切開排膿と同時に瘻管摘出を試み,確実な瘻管摘出をし得た症例を経験したため,文献的考察を含めて報告する.
症例は68歳男性.数日間持続する38°C台の発熱,左頸部腫脹を主訴に来院した.CTで化膿性甲状腺炎と頸部膿瘍を疑う所見を認め,下咽頭梨状窩瘻を通した感染を想定した.まずは抗菌薬を主体とした保存的加療を行うも反応不良であり,切開排膿を行うこととした.切開排膿の前に直達喉頭鏡で下咽頭梨状窩瘻開口部を確認し,染色後に頸部外切開を行ったところ,瘻管の周囲との癒着はごく軽度であり,容易に瘻管を根部で摘出することができた.術後は速やかに炎症消退し,術後半年の間,膿瘍の再発は起こっていない.
下咽頭梨状窩瘻の摘出術の手術時期に関しては,1~3ヵ月の消炎後に行われるのが一般的であったが,近年は炎症早期に摘出を行ったとの報告も増えてきている.ただ,そのなかでも初回の切開排膿と同時に瘻管摘出を行った症例はみられなかった.今症例から,超急性期の手術であれば,下咽頭粘膜直下まで高度炎症が波及することは少なく,甲状咽頭筋を切断し下咽頭粘膜直下で確実に瘻管を確認・摘出することができる可能性が示唆された.

2016/06/24 9:50〜10:40 第3会場

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