第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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頭頸部癌患者の化学療法では口内炎が高頻度に出現する.口内炎によって引き起こされる疼痛のため経口摂取困難や嚥下障害などQOLや栄養状態を低下させ,重症化すると治療の完遂にも大きく影響してくる.このため,疼痛管理のために麻薬を使用することがたびたびあるが,副作用として嘔気や便秘などの不快な消化器症状が出現することも多い.このため,口内炎の発症や重症化を抑制し,疼痛を軽減することで麻薬の使用を減らすことができれば望ましいと考えられる.近年は口内炎の治療薬として,半夏瀉心湯の溶解液によるうがいの治療効果が報告されている.今回われわれは化学療法を行った頭頸部癌患者に対して,半夏瀉心湯によるうがいによる疼痛の改善効果において麻薬の使用量で比較した.
対象は2014年10月~2015年10月まで入院で導入化学療法を行った頭頸部癌患者16名とした.方法はうがい薬を実薬群(半夏瀉心湯)と偽薬群(乳糖)の2群に分けて二重盲検化を行った.うがいの方法は化学療法の開始日からうがい薬を100 mlの白湯に溶解して1日3回,毎食間に2週間行った.使用した抗がん剤は全例でドセタキセル,シスプラチン,5-FUであった.結果は実薬群8人中7人,偽薬群8人中6人で口内炎を発症した.このうち鎮痛薬として麻薬を使用したのは実薬群では2人,偽薬群では3人であった.使用期間はそれぞれ実薬群1.4日,偽薬群では6.2日であった.麻薬の平均使用量はモルヒネ注射に換算すると実薬群で6.2 mg,偽薬群で21.4 mgであった.
今回の結果から,半夏瀉心湯には口内炎の発症を予防する効果は認めなかったが,口内炎の重症化を抑え麻薬の使用量を抑える可能性があると思われる.しかし,本研究では症例数が少なく今後のさらなる症例数の積み重ねが必要である.なお,本研究は当院の倫理審査員会で承認されている.

2016/06/24 10:30〜11:30 第2会場

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