第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

プログラム

No

タイトル

下垂体腺腫に対する手術治療は,顕微鏡を用いた上口唇下切開による経鼻中隔・経蝶形骨洞アプローチ(いわゆるHardy法)から経鼻内視鏡による手術が主流に変わりつつあり,脳神経外科単独の手術ではなく,鼻内視鏡に慣れた耳鼻咽喉科が参画しての手術を行う施設が増加してきている.我々は2015年1月から脳神経外科・耳鼻咽喉科共同での経鼻内視鏡下下垂体腫瘍切除術を行ってきた.多くの症例は経鼻内視鏡下アプローチのみで対応可能であるが,頭蓋内進展が強く,脳幹周囲の血管に対する注意が必要な症例では経鼻内視鏡下アプローチのみではそのような血管を明視下に置くことができないために危険である.このような症例に対して経鼻内視鏡下アプローチと前頭側頭開頭を併用した症例を経験したので報告する.
症例は,66歳男性.Hardy法を2回受けたが,その後も視野障害が残存しており,最近になって視野障害・眼瞼下垂等が増悪,画像上も腫瘍の増大がみられたため,再手術を行うことになった.術前CTおよび術前MRIを用いた光学式ナビゲーションを設置し,開頭と経鼻手術を同時に開始した.頭蓋側ではシルビウス裂を剥離しながら頭蓋内に突出した腫瘍上端とその周囲の血管・神経を明視下に置いた.経鼻内視鏡では両側の篩骨・蝶形骨洞の開放,右中鼻甲介切除,左鼻中隔粘膜下剥離を行って鞍底部へのアプローチを形成した.硬膜を切開して腫瘍の摘出を進め,頭蓋内からの顕微鏡下観察を併用しながら,髄液漏を起こさないように腫瘍上端の皮膜を温存して操作した.内頸動脈の外側など摘出不能な部分の腫瘍を残して腫瘍摘出を行い,鞍内に腹部脂肪を置き,鞍底は鼻中隔軟骨で硬性再建し,遊離中鼻甲介粘膜弁で被覆した.術後経過は良好で,視機能は部分的に改善し,眼瞼下垂も改善した.開頭・頭蓋内操作を併用することで,安全に手術を遂行することができたと考えられる.

2016/06/24 10:30〜11:30 第2会場

操作