第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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魚骨異物は日常診療で多く認めるが,異物が咽頭壁に完全埋入した状態,いわゆる咽頭腔外異物として遭遇するのは稀である.咽頭腔外異物は位置同定が困難であることが多く,摘出に外切開を要する例も少なからず存在する.今回我々は佐藤式彎曲型咽喉頭直達鏡下で経口腔的に摘出し得た下咽頭粘膜下魚骨異物の1例を経験したので報告する.
症例は72歳女性で,夕食にカレイを摂取後から咽頭痛を自覚し,翌日に前医耳鼻咽喉科を受診した.精査により外来での摘出は困難と判断され同日当科に紹介受診となった.咽喉頭ファイバースコピーでは下咽頭後壁右側の腫脹を認めるのみで異物を確認できず,前医CTで第3頸椎レベルの下咽頭後壁右側から頭側正中に向かって走行する線状異物を認めたため,咽頭粘膜下魚骨異物と診断し全身麻酔下で摘出する方針とした.佐藤式彎曲型咽喉頭直達鏡で下咽頭を展開し,CT所見を参考に腫脹部位の頭側から尾側へ向けて電気メスにて粘膜を剥離することで異物を明視下に同定でき,摘出し得た.術後経過は良好で術後2日目に退院した.
経口腔的な観察で異物の同定が困難な場合は外切開による摘出を考慮すべきだが,本症例では下咽頭後壁に異物が存在し,CTでも異物の存在位置が確認可能で,かつ膿瘍や気腫を認めなかったため,より低侵襲な経口腔的摘出を第一選択とした.その際,下咽頭後壁の広範囲な視野確保に佐藤式彎曲型咽喉頭直達鏡が有用であった.咽頭腔外魚骨異物は異物誤飲後ある程度時間が経過してから判明し,診断時に異物周囲の感染を併発している例が少なくないが,本症例では異物誤飲後,比較的早期に診断および治療の機会を得たことも経口腔的摘出成功の一因と考えられた.

2016/06/24 9:50〜10:30 第2会場

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