第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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症例は70歳女性.当科受診10日程前から嚥下時の違和感が出現し近医を受診.右舌根部腫瘤を指摘され当科紹介受診となった.電子スコープ所見上,右舌根部を茎とし声門上を覆うように存在する表面平滑な腫瘤性病変を認めた.頸部にリンパ節は触知せず,舌の運動障害,味覚障害,呼吸苦などの所見は認めなかった.MRIではT1強調画像で低信号,T2強調画像で軽度高信号,Gdで比較的均一に造影される3 cm大の境界明瞭な腫瘤として描出された.診断的治療として全身麻酔下でELPS(endoscopic laryngo-pharyngeal surgery)を施行した.経鼻挿管の後,佐藤式彎曲型喉頭鏡を舌根部に掛け喉頭展開した.耳鼻咽喉科用電子スコープ補助下にて,腫瘍茎を全周性に明視下に置きながら,彎曲鉗子と彎曲ガイド管で固定した内視鏡用針状電気メスを用い病変を摘出した(動画供覧).摘出標本は弾性硬,断面は黄白色の境界明瞭な腫瘤であり,HE染色では紡錘形細胞が認められ,免疫染色ではS100陽性で神経鞘腫と診断された.術後に神経脱落症状は認めなかった.術後2日目まで禁飲食,経管栄養とし,術後3日目から食事開始.術後出血などの合併症なく経過し,術後5日目に退院となった.
神経鞘腫は頭頸部領域には比較的多く認められるが,口腔・咽頭領域での発生は稀である.舌根部の神経鞘腫に対する手術方法としては,我々が渉猟した範囲では経口直視下での手術がほとんどであった.しかし,本症例では腫瘍が巨大であるため腫瘍茎を明視下に置きながら安全に摘出することは困難と考えられた.ELPSによる摘出は彎曲喉頭鏡による展開で良好な視野が得られ,十分なワーキングスペースの確保と彎曲鉗子の使用にて,より安全かつマージンを確認しながら摘出することが可能であり,有用な方法であると考えられた.

2016/06/24 9:50〜10:30 第2会場

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