第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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ESS中の大量出血にて判明した外傷性仮性内頸動脈瘤の1例を経験した.
症例は23歳男性.飲酒後に自宅の2階から転落し前医に救急搬送され,外傷性くも膜下出血,脳挫傷,頭蓋底骨折,気脳症,上顎骨骨折,右橈骨遠位端骨折,右尺骨遠位端骨折の診断にて入院し保存治療をうけた.受傷後より右視力は光覚弁となっており,右視束管骨折としてステロイド治療を受け,その後右視力は0.05まで改善していた.上顎骨骨折に対して顎間固定目的に当院口腔外科に転院した.頭蓋底骨折による鼻性髄液漏も疑われ,当科紹介受診.明らかな髄液漏はなく,経過観察となったが,その後も淡血性の両鼻漏が続くため,髄液漏の確認とその治療目的で全身麻酔下にESSを行った.両側とも後部篩骨洞は血餅が充満していた.両側蝶形骨洞内も血餅様腫瘤が充満しており,強い拍動をともなっていた.この時点では血瘤腫などを疑い,左蝶形骨洞の腫瘤から一部組織を採取したところ,動脈性に出血を来した.すぐにガーゼで圧迫したところ止血を得られた.脳神経外科医とも相談し,後日血管造影で確認することとし覚醒させたが,口腔内吸引時に再び両鼻腔より大量に出血を来したため,再挿管のうえ,全身麻酔下に緊急脳血管撮影を行ったところ,右内頸動脈に仮性動脈瘤が認められため,翌日,当院脳神経外科でSTA-MCA Bypass,high flow bypass(ECA-RAG-MCA)を併用した仮性動脈瘤トラッピング(内頸動脈遮断)術が施行された.術後は明らかな四肢麻痺なくMRIでも明らかな梗塞巣の出現は認められなかった.しかしながら手術時,右眼動脈を処理しており,右目は失明した.術後現在まで再発は認めていない.
外傷性仮性内頸動脈瘤はくも膜下出血や頸動脈海綿静脈ろうで発症することが多く,鼻出血のみで発症することは稀であるが,外傷後の鼻出血の鑑別診断としてその予後を考えると重要な疾患であり,十分留意する必要がある.

2016/06/24 9:00〜9:50 第2会場

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