第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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1.はじめに
近年,内視鏡下鼻内副鼻腔手術(ESS)は硬性鏡,ハイビジョンカメラなどの光学機器,ナビゲーション,デブリッダー,ナビゲーションに代表される手術支援機器の発達により大幅な進歩を遂げた.その一方で狭い鼻副鼻腔における手術視野と操作性の確保については議論がまだ必要と考える.当科で行っているESSの実際と視野と操作性の確保について報告する.
2.出血のコントロール
血圧と心拍数を十分にコントロールした全身麻酔下での手術を原則としている.鼻副鼻腔への血流は前後篩骨動脈,蝶口蓋動脈からが主となるが,解剖学的な容易さから蝶口蓋動脈周囲への局麻注射を十分に行い,症例によっては蝶口蓋動脈をバイポーラで焼灼処理している.粘膜切開部や粘膜断端からの出血も同様に適宜,焼灼止血を行う.タンポンガーゼによる圧迫止血ももちろんであるが,生食洗浄を行うと出血部が分かりやすい.
3.鼻中隔と鼻甲介の処理
鼻中隔の彎曲のある症例はもちろんであるが,軽度な彎曲の例でも鼻中隔の矯正(SMR:粘膜下軟骨,骨切除)を行う.下鼻甲介についても同様にSMRを行う.これらにより中鼻道が拡大され篩骨洞内での内視鏡と鉗子の干渉が軽減される.
4.上顎洞
下鼻甲介のSMRを行い,下鼻甲介骨基部から上顎洞内腔へアプローチすると上顎洞内壁,底部から前壁へのアプローチが容易となる.経下鼻道的開放を併用する場合もある.
5.前頭洞と蝶形骨洞
下鼻甲介のSMRを行い,鼻堤をスタンツェやバーで上方へ削り上げると直視鏡下で前頭窩までの蜂巣処理が容易となる.Draf type II,IIIへの移行も可能である.また鼻中隔矯正から経鼻中隔的に蝶形骨洞の単洞化手術を行うと蝶形骨洞外側病変の処理が容易となる.
6.おわりに
以上に述べた視野と操作性の確保を行ったESSは術後の観察や処置も容易となり,術後内視鏡スコアの向上がみられた.

2016/06/23 10:10〜11:10 第3会場

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