第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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近年,内視鏡手術の技術の向上,手術支援機器の発展に伴い,内視鏡下鼻内手術の適応が拡大しており,内視鏡下に鼻内から翼口蓋窩経由で蝶形骨病変にアプローチ可能な症例もある.今回我々は,悪性腫瘍が疑われた蝶形骨病変に対して内視鏡下に翼口蓋窩経由でアプローチし得た症例を経験したので報告する.
症例は59歳,男性.2ヵ月前より右眼深部から右側頭部にかけて激しい疼痛を自覚し近医を受診し,頭部MRIで斜台から蝶形骨右上顎面にかけて病変を認められたため,香川大学脳神経外科へ紹介となった.同部位のFDG-PET,Fmiso-PET,4DST-PETでそれぞれ集積が認められ精査加療目的に同院耳鼻咽喉科へ紹介となった.精査中に症状は改善したが,悪性腫瘍の可能性も否定できなかったため,内視鏡下に経上顎洞的・経翼口蓋窩的に蝶形骨病変の生検を施行した.右上顎洞後壁の粘膜を剥離し,後壁の骨を一部除去し,蝶口蓋動脈をクリッピングし蝶形骨の骨削開を行い生検を施行した.病理組織診断では一部炎症細胞の浸潤がみられる骨組織のみであった.術後は右上顎神経領域に軽度の感覚障害を認めたが,徐々に改善していった.右眼痛,側頭部痛の症状は再燃することなく経過している.
本症例では結果的には炎症のみであったが,画像検査のみでは悪性腫瘍などとの鑑別は困難であり生検が必要となった.内視鏡下に経上顎洞アプローチを用いることで比較的低侵襲に手術が可能であり有用であったと考える.

2016/06/23 9:00〜10:10 第3会場

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