今回われわれは,術後性上顎囊胞の診断から手術を施行したところ骨露出部を認め,ビスフォスフォネート関連顎骨壊死(Bisphosphonate-Related Osteonecrosis of the Jaws,以下BRONJとする)の診断に至った症例を経験したので報告する.
症例は75歳の女性であり,既往として65年前にCaldwell-Luc手術を施行されている.6年前より左頬部違和感・鼻内異臭を自覚し当院を受診した.左鼻腔内に膿汁を認め,感染性副鼻腔炎と判断し,鼻内洗浄および症状悪化時の抗生剤治療を施行していく方針とした.しかし反復性であり,再度副鼻腔CTを施行したところ術後性上顎囊胞が認められ,頬部違和感の原因は術後性上顎囊胞による可能性があり,手術適応と判断した.全身麻酔下に左内視鏡下鼻副鼻腔手術を施行した.鼻内の清掃を行ったところ下鼻道外側に上顎骨の露出,排膿を認め,口腔内を観察すると左上歯の残根齲歯を認めた.感染の原因は齲歯によるものと判断し,口腔内より抜歯術および腐骨掻把を行った.さらに鼻内よりも腐骨の掻把を行い,骨表面は粘膜にて被覆した.しかし手術後にも下鼻道に排膿が継続しており,さらなる腐骨掻把が必要と考え他院口腔外科へ紹介した.その結果,10年以上前より骨粗鬆症に対して内服しているアレンドロン酸ナトリウム水和物(ビスフォスフォネート)によるBRONJの診断となった.ビスフォスフォネートを中止し口腔外科的治療に並行して鼻内洗浄を行う方針となった.
本症例では術前にBRONJの鑑別ができていなかったが,術前画像診断として副鼻腔MRIを施行していれば上顎骨腐骨の存在を認識し鑑別できた可能性があった.また内服薬の確認および頬部痛・頬部違和感の原因としてBRONJを鑑別に挙げることの重要性が示唆された.
2016/06/23 9:00〜10:10 第3会場