第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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角化囊胞性歯原生腫瘍(keratocystic odontogenic tumor: KCOT)は,浸潤性の発育を示し,まれに悪性転化をきたすことなどから腫瘍性疾患として取り扱われる,迷入歯などに起因する歯原性腫瘍の一つである.多くは下顎歯よりの発生であるがまれに上顎歯より発生するものもある.従来その多くは歯科口腔外科にて外切開手術が施行されていた.近年,耳鼻咽喉科医により内視鏡を用いて鼻内より摘出された報告も散見されるようになってきている.
症例は28歳女性.右鼻閉,粘膿性鼻漏があり近医で右慢性副鼻腔炎として加療されていた.鼻漏は消失したが自覚的な右鼻閉が持続し,鼻内所見では中鼻道の狭小(膜腰部の膨隆)と下鼻道の膨隆が改善しないため,CT検査が施行され右上顎洞真菌症の疑いで紹介となった.CTでは右上顎洞に充満する囊胞状陰影を認め,内部には石灰化様の高輝度陰影の散在を認めた.また右上顎洞外側底部に迷入歯を認めており,画像所見よりKCOTが第一に疑われた.鑑別としては石灰化囊胞性歯原性腫瘍,含歯囊胞,エナメル上皮腫などが考えられたが画像上の判別は困難で,診断を含めて全摘出術を行うこととなった.手術は良性腫瘍を念頭に,EMMM法を用いたアプローチにて内視鏡下に施行した.囊胞壁と上顎洞粘膜との剥離は強い癒着などはなく,内容物の減量によりスムーズに施行可能であった.原因歯を上顎洞内より除去したが,原因歯周辺および本来の智歯の根尖部周囲では上顎洞粘膜との癒着がみられていた.腫瘍はほぼ一塊に鼻内より摘出可能であり,一部残存した基部周囲を処理し手術を終了した.腫瘍サイズは50×33×30 mmであった.術後の組織検査では免疫組織学的な検討も行われ,最終的な病理診断はKCOTであった.術後の合併症などは特になく,自覚症状も改善しており現在は外来にて経過観察中である.

2016/06/23 9:00〜10:10 第3会場

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