第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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【はじめに】小児での鼻腔内腫瘤性病変は後鼻腔ポリープが多く,腫瘍性病変の頻度は高くない.今回我々は,術前に血管腫を疑ったが,病理組織学的に鼻中隔由来の神経鞘腫であった1例を経験したため報告する.
【症例】10歳の男児.主訴は鼻出血,右鼻閉.半年前よりの反復性鼻出血および右鼻閉があり近医受診し,右鼻腔に腫瘤性病変を認めたため,紹介となった.
【現症】前鼻鏡所見で右鼻腔は腫瘤で占拠されていた.腫瘤表面は赤褐色であり易出血性であった.造影CTにて腫瘤は下鼻甲介と中鼻甲介を外側へ偏位させ,均一な造影効果を認めた.翼口蓋窩の付近には病変を認めなかった.前鼻鏡所見と画像検査所見より血管腫を疑ったため,生検を行わず摘出術を予定した.血管造影で右側蝶口蓋動脈と両側大口蓋動脈を主とした腫瘍濃染が確認されたため,両者を塞栓した.
【手術所見】血管塞栓術を行った翌日に内視鏡下鼻内腫瘍摘出術を施行した.腫瘍表面の色調は白色になっていたが触れると出血が多かった.そのため止血用デバイスとして電気凝固装置以外に超音波凝固装置を用い,腫瘍を摘出した.腫瘍基部は鼻中隔であり,鼻中隔粘膜と軟骨膜をつけて摘出した.病理組織学的に神経鞘腫と診断された.
【術後経過】現在術後6ヵ月経過し,腫瘍の再発は認めていない.
【考察】神経鞘腫はSchwann細胞由来の限局性で被膜を有する良性腫瘍であり,頭頸部領域では聴神経由来が多く,鼻中隔に発生することは稀である.治療法は外科的切除が第一である.腫瘍が小さな場合は鼻内法や内視鏡下鼻内手術が選択され,大きな場合はDenker法が選択されていた.血流が豊富であり大きな腫瘍であっても,血管塞栓術や超音波凝固装置を併用することで安全に内視鏡下鼻内手術で摘出が可能と考えられた.

2016/06/23 9:00〜10:10 第3会場

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