第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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(はじめに)サルコイドーシスは,全身のあらゆる臓器を侵す原因不明の疾患である.病理組織学的に乾酪壊死を伴わない類上皮肉芽の肉芽腫性病変を認める.呼吸器科,眼科,循環器科領域の症状を認めることが多いが,鼻副鼻腔粘膜病変については比較的まれである.今回,我々は左羞明が主訴で来院し,画像にて左眼窩先端部に腫瘤性病変を認めた鼻副鼻腔サルコイドーシスの1例を経験した.その臨床症状や治療における経過について文献的考察を含めて報告する.
(症例)35歳男性が2週間前からの左羞明を主訴に,近医眼科受診.その際,左瞳孔が散大しており,精査加療目的に当院眼科紹介受診となった.CT(造影なし)にて左篩骨から蝶形骨にかけて陰影を認め,当科へコンサルトとなった.その際,左眼窩先端部に10 mm×15 mm大の腫瘤性病変が示唆され,造影MRI施行した.CTと同じ部位に,造影効果を認める腫瘤性病変と認めた.神経鞘腫,悪性リンパ腫,IgG4関連疾患が鑑別疾患となった.血液検査にて,sIL-2Rが871と若干高値を認めたが,IgG4, PR3-ANCA, MPO-ANCA, β-D-グルカンは正常であった.またCRP0.52と炎症反応も明らかな異常を示さなかった.PSLを60 mgから1週間漸減内服にて自覚症状は若干の改善を認めるものの,症状が残存するために内視鏡下鼻副鼻腔手術を施行し,鼻副鼻腔粘膜,また左眼窩先端部腫瘤にアプローチし,組織を採取して病理組織学的に検査した.結果,鼻副鼻腔粘膜から乾酪壊死を伴わない類上皮肉芽腫性病変を認め,胸部CTにて両側肺門部リンパ節腫大も示したためサルコイドーシスの診断となった.
(結果)左眼窩先端部の腫瘤性病変を認めた鼻副鼻腔サルコイドーシスの1例を経験した.眼窩先端部へのアプローチにての病理検体では,診断がつきかねたが,鼻副鼻腔粘膜病変での病理にて診断がついた.

2016/06/23 9:00〜10:10 第3会場

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