第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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嚥下運動の際,耳管が開大して中耳腔と外気との圧平衡が行われることは広く知られている.また,耳管機能は滲出性中耳炎や真珠腫などの中耳疾患と密接に関連しており,嚥下運動の際の耳管開大を検知することは嚥下運動が開始されたことの客観的指標となるだけでなく,耳管機能そのものの評価の手掛かりを得ることにもなる.そこで今回われわれは,新たに改良したフォトセンサーを用いた耳管開大検知システム(phototubometry)を開発した.本システムは(有)追坂電子機器の光電声門図計測装置(ePGG)をベースに,特定の近赤外光を発する投光部を耳管咽頭口周辺に留置し,外耳道内に置いたフォトダイオード(受光部)により,耳管開大による光量の変化を感知し,記録するものであり,従来のphototubometryに比べ,環境光による影響がなく,通常の明るい室内でも計測できるという特徴がある.今回は,それに加えて,耳内に小型マイクロホンを留置し,各タスクで生じる音を録音した.健常者11名を対象に,唾液嚥下,鼻すすり,母音/あー/発声を行わせ,その際に耳管咽頭口から耳管を通過する光量の変化を記録した.その結果,全ての対象者で,嚥下の際の光量の変化を捉えることが可能であり,本システムにより耳管機能をモニタできることがわかった.次に,本システムを用いて,耳内嚥下音と耳管開大との関連を検証した.耳内嚥下音では立ち上がりに特徴的なクリック音が記録され,これは耳管開大に関連した音であるとされているが,本研究で,このクリック音は全ての対象者で光量の増大の直前か増大中にみられ,やはり耳管開大に関連した音であると考えられた.また,鼻すすり,発声などのタスクを加えることにより耳管開閉の動態そのものをモニタできることがわかり,本システムを用いて耳管機能の評価,あるいは耳管機能不全の診断が可能であることが示された.

2016/06/23 10:50〜11:30 第2会場

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