第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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耳管の開放が持続すると,咽頭と中耳腔を自由に空気と音声が交通することにより,自声強聴,自己呼吸音聴取,耳閉感などの症状を引き起こす.このような状態を耳管開放症といい,今日ではよくみられる病態である.耳管開放症の患者のなかには鼻すすりをすることにより自声強聴,自己呼吸音聴取,耳閉感などの症状を改善させることができ,そのため,鼻すすり癖を有している例が少なからずみられる.耳管開放症と鼻すすりとの関連は1930年代から報告がある.2005年に小林は日本耳鼻咽喉科学会の宿題報告で「耳管閉鎖障害」を鼻すすりの有無で2型に分類しているように,鼻すすりにより耳管開放症の病態が大きく変化する.耳管開放症の診断は,それを疑いポイントを押さえれば容易であるが,鼻すすりがあると正しく診断されないことが少なくない.さらに,鼻すすりを長期に習慣的に行うことで滲出性中耳炎や真珠性中耳炎などの中耳病変を引き起こす原因ともなるので,鼻すすりは耳科診療における大きな問題である.2014年12月から2015年12月に日本大学医学部附属板橋病院耳鼻咽喉科耳管外来を受診した耳管開放症患者は53例であったが,そのうち,鼻すすり癖のある耳管開放症は13例(24.5%)20耳であった.日本耳科学会耳管小委員会による耳管開放症診断基準(案)に基づき診断を行った後,まず,疾患の説明,耳管開放症に対する保存的治療を行い,それと同時に鼻すすりを厳重に禁止した.これにより十分にコントロールできない場合は,耳管ピン挿入を施行した.現在,これらを対象とし,当科で行っている診断および治療について検討したので報告する.

2016/06/23 9:50〜10:50 第2会場

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