第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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コレステリン肉芽腫はコレステリン結晶に対する異物反応により生じた肉芽組織であり,部位は中耳,特に乳突洞・乳突蜂巣などに多いとされる.治療は一般に換気チューブ留置などにてドレナージを行うが,錐体尖の場合は様々な手術アプローチが提唱されている.一方,渉猟した限りにおいて側頭下窩コレステリン肉芽腫の報告はみられない.当科で経験した本疾患の診断,手術について供覧したい.
症例は65歳男性.33歳の時,他院にて右側中耳手術を施行された既往があり,約2ヵ月前から右耳漏が出現したため近医を受診し,CTにて鼓室前壁の骨欠損を指摘された.MRIを追加したところ側頭下窩にT1・T2高信号を呈する広汎な病変が認められたため,治療目的に当科へ紹介となった.CTでは右上顎洞前壁骨破壊病変も指摘され,個々の病変は上顎腫瘍と側頭下窩コレステリン肉芽腫が疑われたが,血管炎症候群の可能性も否定できず,生検,ドレナージ術を目的に全身麻酔下,中耳手術および内視鏡下副鼻腔手術を施行した.中耳手術はcanal wall down mastoidectomy with intact canal skinとし,鼓室から乳突洞に充満していた瘢痕と肉芽組織を清掃した.耳管鼓室口のやや上内方に骨欠損部を認めここを開窓したところ,大量の褐色調貯留液の流出を認めた.開窓部にシリコンシートを留置し,更に鼓膜換気チューブを留置した.病理組織検査では,上顎洞粘膜は慢性炎症の所見で,中耳は貯留液中にコレステロール結晶を認めコレステリン肉芽腫として矛盾しない結果であった.術後経過は良好で,外来にて経過観察中である.

2016/06/23 9:50〜10:50 第2会場

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