第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

プログラム

No

タイトル

拍動性耳鳴を訴える場合,頭蓋内疾患が存在する可能性を考えなければならない.今回,我々は拍動性耳鳴を主訴に受診し,横・S状静脈洞部硬膜動静脈瘻と診断されるに至った2例を経験したので報告する.
症例1(68歳,女性)は,当科受診1ヵ月前から仰臥位で増悪する右拍動性耳鳴を自覚した.難聴などの異常所見は認めなかったが,耳鳴は経時的に増悪し,右耳後部を聴診すると拍動音を聴取するようになった.頭蓋内疾患を疑い頭部MRI/MRAを施行した.右外頸動脈の分枝の発達と,右S状静脈洞の高信号を認め,右横静脈洞の硬膜動静脈瘻が疑われた.脳血管造影検査にてBorden type1の右横・S状静脈洞部硬膜動静脈瘻と確定診断された.3ヵ月間経過観察ののち,耳鳴が軽快したため,治療適応とはならず,現在も再燃はない.
症例2(68歳,女性)は,当科受診2週間前から右耳鳴を自覚した.右拍動性耳鳴は経時的に増悪を認めた.右は難聴を認めず,画像検査にても異常を認めなかったため経過観察としていた.しかし耳鳴は改善なく当科初診から約2ヵ月後に神経内科を受診したところ,他覚的耳鳴を認め,頭部MRIの再検査にて硬膜動静脈瘻が疑われた.脳血管造影検査にて右横・S状静脈洞部硬膜動静脈瘻と確定診断された.本症例もBorden type1ではあったが,耳鳴症状が強く増悪傾向にあったため,症状緩和目的に脳血管内治療が施行された.
拍動性耳鳴を呈する疾患として,硬膜動静脈瘻をはじめとした頭蓋内血管性病変を考慮する必要がある.脳表静脈逆流を認めない硬膜動静脈瘻(Borden type1)は脳出血のリスクは極めて低いとされており,経過観察となることが多い.しかし,症例2のように耳鳴などの症状が強い場合は治療適応となる.症例1のように経過観察で可能となった場合でも,経過中に病変が進行し,脳出血などをきたすリスクが皆無ではないため注意喚起が必要である.

2016/06/23 9:50〜10:50 第2会場

操作