第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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[はじめに]グロムス腫瘍は傍神経節細胞由来の出血し易い良性腫瘍であるので,術前に栄養血管の塞栓術が併用されることが多い.しかし,塞栓術は脳神経障害塞のリスクを伴う.そのため,今回塞栓術を施行せずに2例の摘出術を施行したが,出血少量で,術後合併症もなかった.その手技をビデオで供覧する.
[症例1]42歳女性.左拍動性耳鳴を主訴に前医を受診.左鼓室内に赤色腫瘤を認め,当科受診した.CTで下鼓室に腫瘍を認め,頸静脈球と腫瘍が連続していた.MRIではT1強調画像およびT2強調画像で脳実質とほぼ等信号の腫瘤として描出された.血管造影検査で腫瘍は強く造影され,下鼓室動脈が栄養血管であった.手術は耳後切開の後,外耳道,鼓膜全層を剥離挙上して,下鼓室開放を行った.その際,腫瘍はmalleus handleを越えて前方まで存在したので,鼓膜をmalleus handleから遊離させて操作した.腫瘍をバイポーラで剥離,挙上,焼灼止血しながら,piece by pieceに摘出した.下鼓室ではjugular bulbと腫瘍の境界は不明瞭であった.Jugular veinとの癒着部分は腫瘍を一部残す形で手術を終了した.術後明らかな神経障害もなく経過し,術6日後に退院した.
[症例2]50歳女性.左拍動性耳鳴の増悪を主訴に前医受診.滲出性中耳炎の疑いで鼓膜穿刺され多量出血し,CT,MRIでグロムス腫瘍を疑われ,当科受診した.鼓膜下象限に赤色の拍動性腫瘍を認めた.CTで下鼓室に限局する軟部陰影を認めた.MRIでT1強調画像で等信号,T2強調画像で高信号,造影効果のある腫瘍として描出された.血管造影では下鼓室動脈が栄養血管と考えられた.手術は症例1と同様に,耳後切開,経外耳道的下鼓室開放を行った.鼓膜に接し下鼓室に限局する拍動性腫瘍は,バイポーラで焼灼止血を繰り返しながら,摘出された.術後合併症なく,術7日後に退院した.

2016/06/23 9:00〜9:50 第2会場

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