第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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迷路瘻孔を有する中耳真珠腫に対する顕微鏡下手術に際しては,まず骨欠損の範囲,真珠腫上皮と内骨膜との関係を見極め,外リ ンパ腔内に真珠腫が進展しているようであれば,さらに迷路内における真珠腫の広がりと膜迷路との関係を見極めながら真珠腫上皮 の全摘出を行う必要がある.Yamauchi らは,エンドスクラブシステムを用い生食還流を行いながら内視鏡下に迷路瘻孔部の処理を行 う方法を最近報告している(Laryngoscope. 2014).水中手術は他科領域でも行われている方法であるが,特にリンパ液などの体液に 満たした部位の操作においては,より生理的環境下で手術が行えるメリットを有すると考えられる.我々も最近,中耳真珠腫に対し て内視鏡・水中下に迷路瘻孔部の処理を行った症例を経験したので,その手術所見と術後経過について報告を行う.
症例は 77 歳女性,真珠腫による外側半規管前方から一部前庭にかかるレベルまで骨欠損を有する右弛緩部型真珠腫症例である.術 前純音聴力検査にて 3 分法にて骨導聴力 15.0 dB,気導聴力 43.3 dB であった.手術に際しては,耳後部切開後,乳突削開,外耳道後 壁を削除した.真珠腫は上鼓室から乳突洞に存在していた.瘻孔部の上皮のみを残して真珠腫を摘出し,その後エンドスクラブを装 着した 4 mm 硬性内視鏡を用いて,生食にて中耳内を持続的に還流しながら手術を進めた.真珠腫上皮は骨内膜に癒着しており,内 骨膜と骨の間にも真珠腫上皮が侵入していたため,真珠腫上皮とともに上皮が癒着した骨内膜も除去した.膜迷路と真珠腫上皮の癒 着も見られなかった.上皮を摘出後,筋膜,軟骨にて閉鎖しフィブリン糊にて固定した.耳小骨は皮質骨を用いて IIIc 再建を行った. 術後経過は良好であり術後 9 日目に退院とした.術後 5 ヵ月時純音聴力検査は骨導聴力 11.7 dB,気導聴力 23.3 dB と良好であった.

2016/06/23 9:00〜9:50 第2会場

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